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ディアッカのベッドは割りと広く、二人で寝転がってもさほど窮屈ではなかった。
しかしミリアリアは、ああは言ったものの、全然眠れない。
彼女はディアッカに背を向けているけれど…
彼の息遣いや些細な動きが気になって仕様がないのだ。
やっぱり一人で寝れば良かったと後悔した。
─あいつが何度か寝返りをうっている。ディアッカも眠れないの…?
そんなことを考えていると突然背中に温かみを感じた。
「───っ!!?デ…ディアッカ…っ!?」
「ごめんミリィ、抱きしめるだけ…。」
ディアッカは私の腹部に腕を回し、ミリアリアを自分の方へ引き寄せた。
「あ…あの…」
私の体温は一気に駆け上がる。
面白いくらいに跳ね上がったミリアリアの心臓の音は、彼に聞こえはしなかっただろうか…。
「どうしたのミリィ、俺の腕振り解かないのか?昔はこうすると9割方そうされてたってのに。
それとも何?今日は残りの1割の日?」
「何…言って…っ」
「そういえば1度だけキスしてくれた…ヴェサリウスが墜ちた日。」
ディアッカの抱きしめる腕に少しだけ力がこもる。
「ディアッカ…?」
「俺は今でもミリィのことが好きだ。AAにいた時と少しも変わらない。」
その一言があまりに嬉しくて、ミリアリアの体温はまるで際限なく上昇する。
「けどミリィは…?ミリィは1割でも抱きしめさせてくれたり、キスもしてくれたけど、
ミリィから俺…まだ何も聞いてない。」
その言葉にミリアリアははっとした。彼女はまだ…迷っていたのだ。
確かに今のミリアリアはディアッカのことが好きだ。それはきちんと自らで結論づけた真実。
だが、彼に想いを伝えることを未だミリアリアは躊躇っていた。
確かな関係を築いてしまうのが恐いのだ。
戦争が終わらぬこの世界で、いつ死んでもおかしくない立場の二人。
確実なものを持ってしまっては、もしものことがあった時…相手を縛ってしまうから。
それを身を持って知っているミリアリアは、そうなることをひどく恐れているのだ。
愛しいのに
想いは同じなのに
伝えたくない
この気持ちの矛盾は、今この瞬間でどうこうなるものではない。
ディアッカは黙りこくり、その場は互いの息遣いすらうるさい。
どのくらいそうしていたのだろうか…。
おそらくほんの数分のことなのだが、
まるでこの二人を包む時間だけが止まっているのかと思うほどに、
ミリアリアには長く感じられた。
「……ディア…ッカ…」
最初に沈黙を破ったのはミリアリア。
緊張で声がかすれた。
「ディアッカ、あの…わた…し…」
“私もあなたが好き”そう言葉が喉を通ろうとしたその瞬間、
ミリアリアの脳裏を過ぎった“SIGNAL LOST”の文字。
「ごめんなさい…」
震えていたのはミリアリアの声とディアッカの手。
「そっか…ごめんなミリィ…。」
ミリアリアの背中から序々に熱が冷めていく。
再び背を向け合った二人は、その後一言も話さず、
いつの間にか疲れた身体の欲するままに、意識が遠のいていった。
やっとちゃんとシリアスです(苦笑)。
ここからストーリーもただただ甘いだけじゃなくなります。……多分…?(こら)