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「おじゃまします」
「おー、狭いけど」
ディアッカに連れられて、彼の家に入ったミリアリアは、想像していたよりずっと
片付いた部屋に少し驚いた。ディアッカの部屋は、男一人で住むには十分過ぎる程
広く、その割に物があまりなかったのが彼らしかった。だから尚更片付いて見えたの
かもしれない。
「全然広いわよ。へぇ〜意外と片付いてるじゃない。」
「普通だって。ミリィ、荷物ここに置いとくな」
「うん、有難う。」
「あ、腹減らない?」
「そういえば…もう夕方だもんね。台所貸してもらえるなら、
私が何か作ろうか?」
「まじ!?頼むよ!!うわーミリィの手料理かぁ…」
バカみたいに喜ぶディアッカを横目に、ミリアリアは冷蔵庫を覘いた。
*
「あぁ〜美味かった!!ご馳走様、ミリィ。疲れてんのに悪いな。」
「大丈夫よ。私だってしばらくお世話になるんだもの、料理ぐらいさせて
もらわないと悪いわ。それよりあんた、ちゃんと栄養摂ってるの?仕事もあまり
休んでないみたいだし…」
「んー、メシはほとんど軍の食堂で食ってる。仕事は家にいてもすることないからな、
イザークに強制で休まされる以外は…」
「ちょっと何ソレ!!軍のだけ食べてたんじゃ体に悪いわ!!…分かった。私が作る!!
昼食は無理として、朝食と夕食は外食禁止!!!」
「えっ!いいの!?俺はむしろそっちの方が嬉しいけど、お前だって仕事あるだろ?」
「私は勤務時間決まってないもの。それに……」
「それに?」
ミリアリアがディアッカから目を逸らし、なんとか聞き取れるぐらいの声で小さく言った。
「…あんたの身体が心配だし…」
彼女の不意打ちに、ディアッカは自分の顔が熱くなるのが分かった。
勿論彼女は自分のことに精一杯で、そんなことには気づきもしない。
「あ!!!!!」
どうやらディアッカはミリアリアがプラントに来ることに相当浮かれていたらしい。
「な…何よ?」
「やっべぇ忘れてたっ!!俺ん家…布団…一敷しかない……」
「───!!!」
こんな時間にもう店は開いていない。
ミリアリアにさっきの熱が、数倍になって戻ってくる。
「あ、いや、でもさっ、ソファあるしっ!!俺そっちで寝るから安心しろって!なっ!?」
ディアッカもかなり焦る。しかしミリアリアは、彼のその言葉を聞くと正気に戻った。
「じゃあ私がそっちに寝る!!ディアッカがベッド使って?」
その言葉にディアッカも我に返る。
「は…?何言ってんだよ!そんなことさせられるかよ!!風ひいたらどうすんだよ。
それとも何?一緒に寝るって!?」
「…………そうする……」
「だろっ!?…って…えぇっ!!?」
─こいつ分かって言ってんのか!?いや、嬉しくないわけじゃないけど…じゃなくて!!
予想外の展開に、ディアッカの口からはしばらく言葉が出てこなかった。
彼の考えていることが分かったのか、ミリアリアは言葉を補う。
「だって、どうせあんた絶対譲らないんでしょ…?でも私だって譲れないもの。」
「いや、確かにそうだけど…」
「言っとくけど、何かしたら承知しないからね!!」
─…自信ねぇー…。
とは思うものの、ディアッカはひとまず複雑な心境で返事を返していた。
今回もまだ甘いですね…(苦笑)。
まあこれから微妙にシリアスになっていくらしいです。