*8*


私はただ走る


息の仕方さえ判らなくなりながら


口の中に滲み出る鉄の味も


今にも動かなくなりそうなこの足も


全てを放り出して私は走る


あなたのいる所にならどこへでも










 「サクラさん…!サクラさん…っ!!どうか…間に合って下さい……!!」










はたけ上忍が教えてくれた任務の内容を思い出す。

混濁する頭で幸い聞き取る事の出来たその中身は、

実習だと言うには明らかにおかしな内容。

信じ難いその言葉を頼りに私は走りました。




空がまだ少し明るい時分

 「…ごほ…っ何とか…間に合いましたか…」

息を切らせてその場所に到着した時には既に



覚悟を決めていました。



彼女を傷付けるものは何であっても許さない。


護る事が私に許されるのだとしたら


この身を捨てても彼女を護ろう。


額に巻かれた里への誓いを外し

忍服の中に仕舞い込む。


この戦いは私個人の意志ですから


目の前の洞窟には闇が広がり

今の私には寧ろ心地よいくらいのそれに溶けこんで、中へと足を踏み入れる。

目を凝らせば更に奥には小さな灯りと、聞こえてくるのは数人の男の声。

どうやら見た目から思っていたよりも、ずっと中は広い造りのようです。

私は目を細めながら背中の刀に手を伸ばしました。





 「そこのお前、何者……っ!?」

見張りらしき男が声を上げるが、私は一気に刀を抜き

声の主を視界に捉えるよりも速く斬り払う。

その瞬間相手の血しぶきによって、この場には戦場の臭いが充満する。

 「おい…っそこに誰かいるのか!?」

先程の声のおかげで私の存在は一気に際立ち、微かな光の中で刀を構え、

刀身が小さく光ったのを合図に、私を取り囲む数人の人間がそれぞれの武器でもって襲い掛かってくる。




数秒か数分か。


とにかく短い時間の後、再び静寂は訪れました。

呻き声一つ洩らさせられることなく、私によって地面に散らばる数体の人間。

 「…ああ、しまった…」

私の目的の人物の居場所を聞き損ねてしまいました…。

刀から手を一度離し、血に濡れているその手の平を片方の腕の袖でぬぐう。

そして刀を一度鞘に戻して手は印を結び、血の海となっているこの場所に幻術を施す。

 「…ごほっ、奥へ行けばいずれ判るでしょう…」

足元はべチャリと音を立て、私は再び奥へと向かって歩き出す。


久し振りに触れた闇に、どうしても以前の冷ややかな感覚が流れ込む。

彼女に出会う前の、氷のように冷えきった感情

研ぎ澄まされたような感覚

鼻をさす血の臭いや、肌にまとわりつく血の感触にはとうに慣れた。

けれど以前とは確実に異なるもの

これほどまでに戦いに集中したことがあっただろうか。

今の私はたった一人の少女を護るために戦う。

愛しくて誰よりも大切な少女


私の掛けた幻術に彼女が嵌まってしまえばいい


そうすれば何も知らない間に全てが片付く。

彼女を傷付けるものを私は全て消してしまおう。

どんなに私が血に塗れても平気ですけど、

彼女が血で汚れてしまうことだけは耐えられない。

だから私のこの姿も、彼女が知らない間の出来事であれと願う。

今度会う時は、彼女は何も知らずにあの丘の木の下で。


そうあればいい。















奥へ進むほど中は部屋のようになっていき、

その途中でやはり私は何人かの人間を斬り進んできました。

最も奥の大きめ扉の前に辿り着いた時、中にいる人物こそが目的の…

サクラさんの相手だと直感しました。

そう考えた途端、私の中で込み上げてくる怒り。










 「ごほっ、…こんばんは」


 「なっ…!?何モンだ!!どこから入って来やがった!!?」

音も無く背後に忍び寄る。

この程度の気配に気付かないなんて、大したことはないんですね。

こんな男にサクラさんが傷付けられるはずだったのかと思うと虫唾が走る。

これ以上彼の声を聞くのでさえ腹立たしくて、

彼が慌てて手にした武器も、すぐさま刀で腕ごと払い落とす。

 「ぐあぁぁああぁあっっ!!!!」

 「うるさいですね…」

 「…ひっ…っ!」

腰を抜かした彼の首筋の真横の壁に、刀の切っ先を突きあてる。

腕から流れ出る血も、先程私が流した血に比べればほんの微量。

当然流したのは私ではなく彼らですけれど……。

 「人間とは愚かな生き物ですね。どれ程勢力を振るっている者も、こうして腕の一本無くしただけでまるで地を這う蟻のようです」

そして私もたった一人の少女のために、こんなにも己を曝け出す。

切っ先をずらせばいとも簡単に相手の首筋からは血が薄く皮膚を伝う。

 「ああそうだ…まだあなたを殺してはいけないんですね…」

 「…!?……がはっ…!!」

腕の無い方の肩を足で踏んで壁に縫い付ける。


 「このままでは私の大切な人が任務を失敗したことになりますからね…

  さぁ…教えて頂きましょうか。あなたの知っていることを全て」

















 「そうですか…それはどうも有難うございました」

 「
────!!」

これで助かると思ったのか、相手の身体の強張りが解けた瞬間

首筋にあてられていた刀がそのまま肉を引き裂く。

あなただけは生かしておくわけがないんですね…。

私は激しく返り血を浴び、床にはボトリと鈍い音が鳴る。

今更血を浴びたところで、何も変わりはしないのですが。

ただ、そのせいで肌に纏わりつく服と、乾いた血の塊は流石に気持ちがいいものではないので、とりあえず上の服を脱ぎ、

その部屋に申し訳程度に備え付けられていた洗面台で、顔と脱いだ服を洗う。

 「…っ!?」

顔を上げて前の鏡を見たその時、丁度私が背を向けている入り口の扉に小さな気配を感じてぎょっとしました。

わずかに扉が開いていくのを鏡越しに見つめる。

いや、見つめているのではなくて目が離せないと言った方が正しいでしょうか。



感じた気配はよく知るもので



今は…会いたくなどなかった…。










 「……ハヤテ…先、…生…?」


































 「サクラ…、さん…」




















 

ごめんなさいぃぃぃ!!!(土下座)
グ、グロ…(滝汗)!!ここまでヒドイと思ってなかった方には申し訳ないです。
とにかくハヤテには血まみれになってもらいたかっ……た…とか…ま、まさか…ね、
管理人はそんな事…な…いです、よ?(汗)
そういやハヤテはよく走るなぁ…。走って下さい、サクラのために(笑)。
あ、ハヤテが脱いだ!!というより脱がしたかった(変態!!)。
今回背景もつけてみました。
たまたま描いたハヤテ絵がなんとなくこの回のお話に合っている気がしたので。
内容のグロさはせめてこの背景サービスで(サービスなわけがない)許して下されば嬉しいです(汗)。