*7*
アカデミーの授業を思い出す。
何も怖くなんてなかった。
あの時はまだずっと先の話だと思ってた。
理解していたのは、テストで点を取るための言葉だけ。
女一人で立ち向かうことがこんなに怖いことだと思わなかった。
私はずっと…護られていたんだと気付く。
大好きなあの場所に、帰れるだろうか
大好きなあの人の隣に、戻れるだろうか
乗り越えられれば、目を腫らしてあの人に会うことなんて二度と無くなる
こんなに苦しい思いをすることももう無くなる
大丈夫
きっと強くなれる
大丈夫
“ハヤテ先生”と呼ぶことさえ切なくなるほどのこの想いに
耐えられるくらい強くなりたいから。
「サクラ、本当に大丈夫なのね?」
「…はい、大丈夫ですアンコ上忍」
待機している宿で、何度も付き添いのアンコ上忍に確認された。
任務は今晩から明日にかけて。
小さな里同士の戦で、その一方の里から受けた依頼。内容は勿論敵の里から情報を得ること。
しかも現在も尚小さな紛争があらゆる場所で起こっているらしく、いつどこで人が死んでもおかしくない状況。
依頼元の里では、もはや諜報任務に忍びを割く余裕もないとのこと。
相手は里の大名から直接指示を受けている人間で、そして何より無類の少女好きと言われているらしい。
この内容に誰を任務に就かせようかと検討していたところに舞い込んだ、私の諜報任務への希望。
本当は下忍の諜報任務の前には一度実習任務があるのだけれど、今回の任務は実習とは名ばかりのAランク任務だ。
「サクラ…言いにくいことなんだけど…あんたさ、破瓜は…?」
「…済んでます…安心して下さい」
「…そう」
アンコ上忍は私では少し荷が重いと思われるこの任務に、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
私はそんな彼女に微笑みながらそう答えた。
本当はまだだけど、多分動揺は隠せた思う。
破瓜がどんなものかちゃんと判ってる。
くの一にとって、身体は武器だ。
武器はいかなる状態でも目的を果たせなければ役に立たない。
感情はいらない
「ねぇサクラ、…もしも……」
「はい?」
「いや、何でもないわ」
「…それじゃアンコ上忍、準備して来ますね」
「カカシ先生、お願いがあるんです」
「サクラ…?」
「私に諜報任務をさせて下さい」
「!?」
先生が目を見開いた。
「…女の諜報任務がどういうことか…判っているのか?」
私は何も言わずにただ頷いた。
「俺はそんなに早くから…お前にそんなことさせるつもりなんてないよ。
それにサクラはまだ…ハジメテも経験してないでしょうが…」
「じゃあ先生、私の破瓜に付き合ってくれる…?」
「サクラ!!」
「───きゃ…!!」
二人の横にある木が先生によって大きな音を立てた。
振動で木の葉が数枚、先生と私の周りで宙を舞う。
一瞬ビクリと身体を震わせたけど、本気だと伝えたくて真っ直ぐカカシ先生の目を見つめた。
先生は数歩近づいて、私の髪に手をのばす。けれどその手は途中でぴたりと動きを止めた。
「…ごめんね先生…でも私、ちゃんと考えて決めたの」
「…俺じゃ…駄目なんだな…」
「………お願い」
動きを止めた手はまた動き出し、最後に私の頭に一度だけ手をのせて、
カカシ先生は私の前から姿を消した。
「…ありがとう…」
私の呟いた声が、ちゃんと先生に聞こえたのかどうかは判らなかった。
いつもより露出の多い服装
唇には薄く紅をひいて
額あてを外す。
武器は髪を彩るかんざしだけ
むせ返るほどの男を誘う香が
気を紛らわせるのに丁度いい
もしもあの人がこの姿を見たら何て言うんだろう?
そんなことを悠長に考えてしまった自分に苦笑を洩らす。
少しの間目を閉じて深呼吸をした。
大丈夫
そしてゆっくり目を開いた。
「行きましょう、アンコ上忍」
私達は宿を後にした。
久し振りにサクラ登場(笑)。
ずっとハヤテさんが出張ってたからなぁ…(だからそれは私のせいだろ)。
ついにアンコまで出てきましたねー。
紅でも良い気がしてたんですけど、なんとなくこう…ヒナタがいるから止めました(笑)。
他のキャラを出せると何だか特した気分になります(意味不明)。
それにしても、具体的な内容のお話は考えるの難しいです。ええ…と…色んなことは目を瞑ってやって下さい(滝汗)。
ほら、なんせあの管理人が書いたお話ですから(どの管理人ですか)。
次はグロテスク万歳なんで、苦手な方お気をつけ下さいね(苦笑)。