*6*
「春野が…諜報任務の実習に就きました」
「…え…?」
私は自分の耳を疑いました。
そんなことあの人がさせるはずがない。
「ちょ…っ!月光上忍!!!!?」
私は受付所を飛び出しました。
背中に投げ掛けられる自分の名前になんか構っていられない。
目の前が真っ白だ。
何も聞こえない。
視界に飛び込んでくる木々の緑も
耳元で唸る風の音も
皮膚を掠める木の枝も
何も感じない。
何も考えられない頭で
私はあの人のもとへと走っていました。
「はぁっ…はぁ……っごほっ」
「…ハヤテ…」
「…捜しましたよ、はたけ上忍」
「こっちもお前を捜していたところだよ」
「あなたにお聞きしたいことがあります」
「…ああ…」
ほんの2・3秒の間でしょうが、お互い無表情のまま流れた沈黙は随分と長く感じられました。
「そう殺気立ちなさんなって」
「……私を捜していたって…何の用ですか?…」
そこで初めてはたけ上忍は感情を表に出しました。
顔の殆どが何かしら覆われ、唯一露になっているそこには
後悔が入り混じったような、今にも叫び出しそうな
何故かとても苦しそうな瞳。
どうしてあなたがそんな顔をするんです?
泣き出したいのはもうずっと前から私だというのに。
「なぁハヤテ…お前、サクラのことどう思う…?」
おさまった筈の鼓動が再びうるさく鳴り響く。
「……どう思う…とは?」
「サクラに、恋愛感情があるか…?」
「…っ!!」
恐れていたセリフが今まさに音となった。
「何故あなたに…そんなことを訊かれなければならないんですか…!」
だってあなたは
私がどんなに望んでも手に入らないのに
手をのばせばすぐに届くのに
私に静かに彼女を想わせてもくれないんですか…?
苦しい。
むせ返るような衝動。
「お前に、頼みたい事があるからだ」
なんて皮肉なことでしょう
よりにもよってあなたに頼み事をされるなんて
「それならまず…私の質問に答えて下さい」
「…判った」
「何故彼女を…サクラさんをあんな任務に就かせたんですか…!?」
「…ハヤテ…」
「あなたしか…彼女を護ってあげられる人なんていないのに…っ!!」
「……っ俺には!!」
次第に大きくなってゆく互いの声。
半ば叫ぶように発されたその声が、少し震えていました。
「俺には出来ないんだよ!あいつを止めることなんて…!!」
「なっ…!?」
「頼むハヤテ…サクラを止めてくれ!!サクラに声が届くのは
…お前だけなんだ……!!」
──────!?──────
視界が揺らぐ。
今の言葉にだけまるで色が付いたかのように
頭の中で何度も浮かび上がる。
それなのに一向に意識がはっきりしない。
「…何を…」
「ハヤテ」
「何を…言って…」
はたけ上忍が頭を下げる姿に、妙にゆっくりと焦点が合う。
「頼む…!」
ただひとつはっきりする事は
「…あなたが行かないのなら…っ私が行きます!!」
目を閉じれば
桜の花が綻ぶよりも愛しい
あなたの姿がありました
私が行って何になる……?
判らないけれど、あなたを護りたいんです。
ただそれだけで
私は駆け出していました。
ハヤテがやっと動きました。
カカシ先生はどこまでも不憫なんですこのお話(苦笑)。
これで心置きなくハヤテとサクラの世界が書けますねvv(笑)
これから若干暗い目な感じになっていきます。…多分(おい)。ていうかもう既に暗い(苦笑)。
次回辺りから裏要素入ってくると思いますので。
もっと鮮やかな描写が表現出来るようになりたいです…やっぱ言葉って難しい。