*4*
「なぁサクラ………ハヤテは好きか…?」
頭の中で何度も繰り返される言葉。
判ってる。そういう意味で訊いたんじゃないってこと。
でも、気になって仕様がない。
あの人の言葉に一喜一憂するこの感情を
私には恋だと形容することでしか、表現出来ない。
カカシ先生にあの言葉を投げかけられた日
いつもの場所へ目を腫らして遅れて行った。
ハヤテ先生は相変わらず大きな木の下で私を待っていてくれて、
その日私達は修行をせずに、ハヤテ先生は私の隣に腰掛けてひたすら頭を撫でていてくれた。
いつもの様にただ黙って。
それがとても心地よくて、辛くて、
私はまた涙を流した。
いつの日だったか、私は心の中でもう一度ハヤテ先生をこう呼んだ。
“ハヤテさん”
その時胸が締め付けられるような感覚に陥った。
「それにサクラさんは仲の良い妹のようだと思っているので…」
息苦しさが、私にハヤテ先生を出会った時のように呼んではいけないような気にさせた。
まるで先生と呼ぶ事だけが私に許された、たった一つの彼との繋がりだと思わせるみたいに。
幼い頃に読んだ物語を思い出す。
決して食べてはならない禁断の果実の成る木に近づくような、そんな感覚。
その実を食べてしまえば新たな知識を得る代償として、楽園から永久追放される。
近づいてはならない領域。
触れてはならない果実。
私の足をその領域に踏み込ませないのは、
ハヤテ先生の言葉?
それとも私の心?
カカシ先生に抱き締められた時
以前なら触れるだけでドキドキした私の心は何も反応しなかった。
ハヤテ先生が私に優しくすると
嬉しくて、その後どうしようもないくらいに切なくなる。
どうしてこんなにも切ないのだろう…
どうしてこんなにも傍にいたいのだろう…
苦しいのに
泣きたいのに
こんなにも会いたいと思うのは…
愛しい
優しくしないで
微笑みかけないで
これ以上私を苦しめないで
報われないこの想いに
名前を付けることも億劫なのに
それでもあなたの傍を望んでしまう
だったらこの足をもぎ取ってしまえればいいのに…
領域に足を踏み入れてしまう前に。
苦しみの楽園と
恐れの果実
たとえ果実が未知なるものだとしても
手に入るのは拒絶という永久追放
たとえ楽園が拒絶の存在しない世界だとしても
果実は決して手には入らない
どちらももう…………限界。
あなたが必要じゃなくなるくらいに強くなりたい。
元いた場所には戻れないかもしれないけれど。
強くあればきっと…もうこんな思いもしない。
「カカシ先生、お願いがあるんです」
「サクラ…?」
勢いで、決めたわけじゃない。
「私に諜報任務をさせて下さい」
…あーあ。やっちゃいましたねー。
最後のセリフが何を意味するのか判らない方は、この後のお話で判ると思いますので。
ちなみにカカシの最初のセリフ、サクラはああ解釈してますが、勿論カカシは本気で
ハヤテへの気持ちを訊いています(笑)。解かり難い小説で済みません(汗)。
とりあえず簡単に補足説明すると、サクラはハヤテが好きなんだってことです(まとめた!)。
で、ハヤテの妹宣言のお蔭でサクラは苦しんでるんです!!
今回の比喩表現は、聖書の有名なアダムとエバの物語から抜粋。
管理人はこのお話、聖書で読んだことあるんですよ(笑)。