*11*


冷たい言葉が降り注ぐ。


けれどそれはあなたの本音じゃないって判るから。


愛しいあなたの優しさを忘れるわけないもの。


あなたを直視出来ないのは


あなたを濡らすその血が


私のためだと思ってしまいそうだから。


足の震えが止まらないのは


あなたが沢山戦ったのだと知ったから。













 「んんっ…!!」


カカシ先生に掴まれたのと同じ場所を、今度はハヤテ先生が掴む。

痛みはあの時よりもひどいのに

私はその痛みを訴えることを忘れてしまう。

ハヤテ先生の片方の手は私の後頭部に回され、

私はただ苦しさに悶える。

だんだん脳に酸素が回らなくなってきて、

思考は途切れ途切れ。

必死に立っていた足の力もついに抜けて、

ガクリと倒れそうになるのを彼の腕に支えられる。

そこでやっと呼吸するのを許された。










 「先生、なんで…?」

先生はじっと私を見据えて、そして私の質問を無視して言った。

 「もう一度訊きます。何故、こんな任務を受けたのですか?」

 「…それは…っ」

そんなの言えるわけがない。

口ごもる私の顔はきっと真っ赤になっている。

中々答えを出さない私に呆れたのか、先生が溜息をこぼす。

 「はあ…。諜報任務をすることが一体どういうことを指すのか、あなたはちゃんと判っているんですか?」

 「この任務は…私がちゃんと考えて決めたことですから…」

 「全く…あなたという人は…」

 「!?」

支えられていた身体が突然宙に浮く。

 「諜報任務をする上で重要なのは、相手をいかに油断させ、隙を作り、情報を聞き出すか」

そう言いながら先生は私を横抱きにし、私は部屋の奥の寝台まで運ばれていた。

 「つまり」

私はそこに下ろされ、


 「こういう風にもなるってことですよ?」


ハヤテ先生が、私に覆いかぶさる。

上から見下ろしてくる先生の目は、いつもと違っていて、

その目は子供の私でも判るほど熱っぽくて、ドキリとする。

 「……っ!!わ…判ってます…!!」

 「そうですか。それじゃあ私から何か情報を聞き出してみて下さい」

 「なっ…何のですか…!!」

 「さぁ…?」

 「んうっ…!」

再び唇を塞がれた。

けれどさっきのとは比べ物にならないような口付け。

口の中に何かが侵入してくる。

口内を動き回るそれは私の舌に絡まって、

私は溢れ出す唾液を飲み込みきれずに、それは口の端から頬を伝って零れる。

先生の肩を押しのけるための両腕は、既に先生の片手一つに拘束されて動かない。

 「はあ…っ…っあ…!」

突然首筋に走るピリッとした痛み。

 「いや…!!先生っ…いたい!!」

 「今更喚いたってもう遅いんですね」

着ている着物の前を大きく肌蹴させられ、恥ずかしさに悲鳴をあげる。

 「あぁっ…きゃあっ…!」

ここまでされれば、いくら私でもこの後に何が起こるかくらい想像できた。

胸は先生の手に触れられ、耳は舐められたり浅く噛まれたりしている。

背中がゾクゾクとして、今までに感じたことのない感覚が全身を支配する。

先生からは血の臭い。

先生の身体も血で汚れていて、同時に先生が私に触れた場所にはその血の赤が色移りする。

 「やめて先生!!…やだっ…」

 「判っていたんでしょう?覚悟もしていたんでしょう?」

 「…あっ…ごめんなさ…っ、ゆ…許して…おねが…い」

私の口は何故か謝罪の言葉を意味もなく発するだけ。


理解していた


覚悟もしていた


けれど先生とこんな風になりたかったわけじゃない。


だってそこには何もない。


私の純粋な気持ちが踏みにじられるような気さえした。


愛しいこの人は、何の感情も私には抱いていないのだから。




たとえ一人でも、この任務は乗り越えようとしていた。


そのために、泣かないと決めたのに。




それなのに



悲しくて



悲しくて



溢れる涙を止める術を私は知らずに、



せめて私は懸命に泣き声を殺す。



 「…うぅ…っく……」

私の涙を見た瞬間、ハヤテ先生の動きが止まった。

いつの間にか両腕の拘束は解かれ、自由になっていた。

先生は私の額に掛かる髪を払い、そのまま親指で涙を拭き取る。

その仕草があまりにも唐突に優しくなるから、

涙はまた幾線もの筋を描く。

 「…そんな風に…泣かないで下さい…」

 「ふぇ…だってハヤテ先生…っふ…ぅ」

 「サクラさん…今から私が言うことは、…嘘やからかいなんかじゃないですよ?」

 「……?」



私の知っているいつもの先生は、今にも泣いてしまいそうに微笑んだ。




































 「好きなんです。サクラさん…あなたのことが誰よりも」












 

はい微裏〜(笑)。楽しい楽しいvv
やっと!やっとハヤテが告白しました!
この回書くのはいつもよりもやたら速かったですから!!(笑)
それにしてもハヤテにやられてしまった相手の男性は、同じ部屋にいるのに全く無視されてますね(爆)
うん、次は触れてあげよう…(笑)…出来れば。
今回から次回にかけてくらいが山場です。
この勢いで次も書けると良いなぁと思います…(苦笑)