ドミニオンから一筋の大きな光が、アークエンジェルに向かって放たれた。

ああ…これもきっと懐かしいあの人が、いつもみたいに身体を貫くような声で、

『撃て』と叫んだものなのだろうか…。

ドミニオンからの攻撃がある度に、だいたいにしてそんな風なことが頭をよぎる。

そう…自らの艦がその光と衝突するであろう、今この瞬間でさえも。

本当は心の奥底で、お互いが無事に生き残れたらいいのに…って思ってたのかもしれない。

でもあの人は真面目だから…戦闘体制に入ってしまったら、そんなことはあり得ないなんてことは、

分かっている…ドミニオンがこの艦を追う以上は。

なんだか矛盾してるけど、光がもう目の前にまで迫って来た時、俺はあの人が叫んだ光に包まれるなら、

それでもいいかもしれないと思った。

 

俺の馬鹿みたいな切実な思考は、ストライクに遮られた。

愛する人を護る為に…。この人も俺と同じことを考えていたんだって、すぐにそう思った。

俺の背後で、艦長の悲鳴は聞こえなかった。代わりに…ムゥという嘆きが聞こえた。

俺が宇宙の一部に化しても、あの人が生きるなら…。

 

そしてアークエンジェルが撃った光は、宇宙を照らし、あの人の下に届いた。

その光と爆発の光がいやに輝いて見えたせいか、

今もあの情景が、まぶたの裏に焼き付いて離れない…。

 

   ―愛歌                        管理人 流亜

 

後悔が無いと言えば嘘になる。

それは取りとめもないもしもの連続。

もしもあの時言葉を伝えていたら…?

もしもあの日あなたを引きとめていたら…?

もしもあの瞬間…自分の艦を少しでもずらしていたら…?

 

あなたは今…俺の目の前に…いるのだろうか…?

 

前を見据え、常に自分を信じて歩むあなたが、俺には正直眩し過ぎました。

抱く憧れと尊敬は、いつしか温かいものに変わり、

少しでもあなたとの距離を縮めたくて…

少しでも俺の名前を呼んで欲しくて…

 

あなたに密かに想う人がいるのは知っていました。気が付けばあなたを目で追っていた俺だから。

彼にはとうに想い想われる存在がいたのを知るあなたは、

誰にも分からぬように、

そっと

そっと

身を引いたのも、俺には分かってしまいました。

その彼にさえ、あなたは自分の意志を貫く。

その潔く、凛としたあなたが好きでした。

 

そして時折見せる、小さく柔らかな笑顔が…俺は何より好きでした。

 

だから…だから俺は前を向きます。あなたのように…。

あなたが誇って逝ったように…あなたの誇りを守っていきたい。

あなたが意志を貫いたように…俺も自分を信じ貫いていきたい。

…どうか…もう護ることの出来ないあなたを守らせて下さい。

 

…だから…。

 

俺は再び操縦席に座ります。

あなたが見失うことのなかった、平和の舵を握って……。                                              

                                            −END−

 

 

 

  ナタルさん、実は公式でムゥさんのことが気になってたらしいです。

  驚きのような納得なような…。

  ノイマンさんが運命で出てこられたので、嬉しさのあまり、

脳にしまっていた妄想を引っ張り出してきてしまいました(笑)。