「ディアッカ、これでいいの?」
「ん、そんなもんだな。いやー、しっかしミリィ…お前何着ても似合うねぇ。また長襦袢てのがそそるし」
「歯が浮くからやめて。これって着物用の下着でしょ?そんなの似合ったって嬉しくないわよ」
ミリアリアがそう言うと、ディアッカはいつもの調子で悪戯っぽく笑って見せた。
ただ普段とは雰囲気が少し違っていた。それは今日が1月1日だからだ。
つまり今日のディアッカは初詣にいくために、羽織と袴を着けており、また趣味が日本舞踊のディアッカがミリアリアの着付けをしている。
そもそも着物を着るように勧めたのはディアッカなのだが、今はその着付けの真最中…という訳なのだ。
「ほんと、お母さんの着物が残ってて良かったぁ。」
「そうだな。色も調度ミリィに合うし。あ、そのまま腕あげててな。」
そうしてディアッカがミリアリアに帯を巻いていく。独特の衣擦れの音が、やけに心地よかった。
二人の顔が近くて、ミリアリアはドキドキしていた。
「ほらミリィ、これで完成!うん、似合う似合う。さすが俺。」
「違うわよー、きっと着物がいいのよ!うん、でも…ありがと…ディアッカがいなかったらずっとタンスに眠ったままだったわ。
それに私、着物着るのって初めてだから、ちょっと嬉しいし。…浴衣ならあるんだけど。」
ミリアリアはそう言うが、少なくともディアッカにとっては決してそんなことはなかった。
落ち着いたピンクの着物には鮮やかながら同系色で小さな花が散りばめてあり、それをまとったミリアリアそのものが花のようで、
ディアッカはしばらくその姿に見とれていたが、ふとディアッカが何かを思い出したように口を開いた。
「…なあミリィ…」
「何よ?」
「あのさ、今日のご褒美ってないわけ?」
「はあ?ちょ…何言って…あーっ…」
流れるような動きでディアッカはミリアリアを自分のそばへ引き寄せ、彼女の細い腰に逞しい腕を回した。
ミリアリアは着物を着ているだけにいつも以上に抵抗できない。
「ミリィ、綺麗…」
「……ひゃっ…」
ミリアリアの耳元で甘く囁くと、彼女はその声と耳に掛かる吐息ですぐに耳まで真っ赤に染まる。
それでおとなしくなったミリアリアの隙をついて、ディアッカはすかさず彼女の唇を塞いだ。
「──!!──」
勿論ディアッカは分かってやっているが、こうまでされてはミリアリアに抵抗する術も意思もありはしない。
仕方なくミリアリアが目を閉じた。
するとディアッカの大きな手の平がミリアリアの両まぶたに覆い被さり、
そこでやっと彼女に言葉を発することが許された。
「ちょ…ディアッカ!いきなり何のつもり!?手、どけてよ!」
「いいから、しばらくそのままで目、つむってて…?」
「…?……」
突然、ふわりとミリアリアの髪に何かが触れた。
「ミリィ…目、開けていいよ…」
ディアッカが手を退けるのに合わせて、ミリアリアの目がゆっくりと開かれる。
「何…?今何かが髪に……」
ミリアリアの手が自身の髪に伸びる。
「あ、触るなよ。ほら、こっち来て…」
怪訝な面持ちのミリアリアの手を引いて、ディアッカは彼女を鏡台の前に立たせた。
鏡に映った自分の姿を見て、ミリアリアは一瞬言葉を失った。
「ディアッカ…これ…」
「な?やっぱ俺ってばなかなかいいセンスしてるだろ?」
ミリアリアの目の前の鏡には、淡い紫色の髪飾りをつけた自分。
小さな花をあしらったそれは、今日のミリアリアの格好にとてもよく似合っていた。
彼女が驚いている様子を見たディアッカは、その笑みを深くして言った。
「ミリィに絶対似合うと思ってさ」
「有難う…すごく、嬉しい…」
花のほころぶような笑顔を向けたミリアリアの手を取り、ディアッカは満足そうに微笑み返した。
「それじゃ行きますか、お姫様」
END
今年の年賀状で、着物ミリアリアを描いた際に妄想された代物(笑)。
授業中に描いていたので脳内大変なことになっていました(ばかー)。
因みに髪飾りの色がディアッカの瞳と同じ色なのは管理人とディアッカの陰謀です(笑)。
サイトアップにあたり、大幅に修正。
2005/09/30
2007/07/15(修正2度目)