CANDY

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   CANDY

 

 

戦争が終結し、オーブには序々に平和な日々が取り戻されつつあった。

一方政府では、安定し始めた治安の維持、その他各国首脳との対談や条約の締結など、

政府の人間は皆階級などに関わらず、忙しく働き回っていた。

勿論オーブ首長国連邦代表のカガリなどは言うまでもない。

終戦直後は混乱のために上手く機能しなかった政府だが、大戦時に国家反逆罪で

数名の政府要人が逮捕されたために、現在は人不足も手伝ってか、

ここ数日間は特に多忙を極めた。

 

 「カガリ」

引き続きカガリの護衛を勤めていたアスランだったが、この忙しい現状に

コーディネーターである彼も護衛以外の仕事につくことが何度かあった。

互いのスケジュールが微妙にすれ違い、仕事で顔を合わせても、ほんのわずかな

休憩時間が被ったりすることは最近ではほとんどない。

 

たまたま部屋に二人きりとなったわずかな時間。

普段なら仕事中は絶対にカガリに私用で話し掛けることはないアスランだが、

そんな状況についにしびれを切らしてカガリに声を掛けた。

 

 「ん?どうしたんだアスラン」

声を掛けられたカガリは、さも珍しそうにアスランにその琥珀色の瞳を向けた。。

 「その…大丈夫か?」

 「え?」

 「最近かなり忙しいみたいだし、あまり寝てないんだろう?」

 「ああ、大丈夫。私はそんなにヤワじゃない。それに普段からちゃんと

  鍛えているからな」

そう言って微笑んで見せるカガリの顔には、やはり疲れが出ているのが見て取れた。

それをアスランが見逃すはずはなく、彼は顔をしかめた。

 「カガリ、頑張るなとは言わないが、せめて食事と睡眠はきちんと摂ってくれ」

 「…摂っているぞ?」

今までアスランに向けられていた視線が、宙を彷徨い始める。

 「カガリ、分かってるんだぞ。仕事に忙殺されてろくに食事も睡眠も摂れてないだろ…?」

 「う…お前…めざといな」

 「カガリ!!」

 「…ごめん」

護衛以外の仕事についている時でなければ、ほとんど彼女と行動を共にしているのだ。

気付かないわけがない。ましてや誰よりもカガリの身を心配しているアスランなのだから。

アスランはちらりと自分の腕時計へ目を遣った。

 「まだ少し時間はあるな」

 「…へ…?」

アスランは上着のポケットに手を突っ込み、何かを探しているようだった。

 「アスラン?」

 「…あった。ほら」

突然のアスランの意味不明な言動に、はてなマークを浮かべているカガリの目の前に、

アスランは手の平を差し出した。

 「…キャン、ディー…?」

そこにあったのは小さな可愛らしい包みが一つ、

ちょこんとアスランの大きな手の平の上に座っていた。

 「ああ、この前マルキオ様の所へ行った時、子ども達に貰ったんだ。

  俺は甘いものはそんなに食べないから、ずっとポケットに入っていたんだが…。

  これくらいの大きさならこの時間で食べきれるだろう。

  カガリ、少しでも食べておいた方がいい」

なんだかアスランにキャンディというのも可笑しくて、

カガリはクスクス笑いながらそれを受け取った。

 「有難うな、アスラン」

 「いや…」

笑われた恥ずかしさで一瞬目を背けたアスランだが、嬉しそうに包みを開けるカガリに

すぐに目を向け直す。

 「なぁ、これ何味だ?」

 「さぁ…?食べてみれば分かるんじゃないのか?」

「そっか、そうだな」

アスランの意見に納得して、カガリは小さなキャンディを口に放り込んだ。

爽やかな甘さが口に広がり、疲れた身体にささやかな癒しを与える。

 「美味しい…」

 「そうか、良かったな。で、結局何味だったんだ?」

 「んー…何味だろうな?アップル…レモン?いや、ピーチか?」

カガリは顎に手を添えて、首を傾けながら考えている。

その久し振りに見たカガリの素の姿に、アスランは

つい仕事中だということを忘れてしまう。

カガリが視線を元に戻すと、ふいにアスランと目が合った。

言葉はなく、アスランの真剣な眼差しだけがカガリを捕らえる。

カガリはドキドキしている内心を抑え、平常心を装ってなんとか口を開いた。

 「ア…アスラ……ン?アスラーン??」

 「カガリがあんな顔するから…」

 「は!?──っ!!」

アスランはそう言うや否や、その鍛え抜かれた腕をカガリの腰に伸ばし、

そして自分の方へ引き寄せる。

 「ちょっ…アス…んんっ!」

キャンディを口に含んだまま、カガリの唇はアスランのそれに塞がれた。

急なことに油断していたカガリの唇は、いとも簡単にアスランに割って入られてしまう。

 「ふ…はぁ…ん…」

カガリの甘い舌をアスランはキャンディごと絡めとり、

洩れる吐息は甘い香りを漂わせ、時々歯にあたるキャンディがカチリと音をたてる。

二人で転がされたキャンディはすぐに溶けて無くなってしまい、

甘い味だけが口に残った。

更に離れ間際にアスランは、カガリの唇についたキャンディの蜜を舐める。

カガリの頬は耳まで真っ赤に染まっている。

 「…アップル味」

 「……甘いものは苦手なんじゃないのか…?」

 「カガリは別」

 「………」

悪戯ぽく笑っているアスランをカガリは軽く睨みつけた。

けれどもカガリはすぐにまたふわりと微笑む。

 「今のキャンディ、本当はアスランが買って来てくれたんだろ?」

 「!!」

アスランは目を丸くして、そう言った彼女を見ている。

「忘れたのか?マルキオ様の孤児院ではおやつは全部手作りだぞ?」

 「…あー…」

そうなのだ。あそこではいつもラクスが作った菓子を食べている。

 「アスラン、有難うな。嬉しい…」

今度はカガリの方からそっとアスランに身を寄せた。

 「ほんのわずかな時間でも、こうして過ごす時間が一番好きだ」

 「ああ、俺もだ」

 

 

 

 

 

 

 

 「……カガリ…時間だ…」

 「…ああ、行こうアスラン」

アスランが数歩あるき出す。が、しかしカガリはその場に立ち止まったまま、

何か物言いたげにしている。

「…?どうしたカガリ?」

「あ…その…お前も大丈夫、か…?」

心配そうに自分を見つめてくるカガリがあまりに可愛くて、

思わずアスランの口元には笑みがこぼれる。

 「…ぷ…っくくく…」

 「おまっ、笑うなよ!私は心配して…」

 「いや、すまない。大丈夫だよ、久々にカガリを味わったから」

 「!!!!」

さらりとアスランは言ってのけ、

カガリの頬がみるみるうちに赤く染まっていく。

 「ア…アスランのバカヤロー!!」

 「わっ…ちょっ、カガリ!先に行くなって…っ」

 「うるさい!!ってだから笑うなぁっ!」

忙しさで賑やかなオーブ官邸に、いっそう明るい二人の声が響き渡った。

 

 

その後の会議では、終始代表の顔が赤かったとか。

 

 

 

END

 

 

   ………(滝汗)…。
   は…初アスカガ小説です。…甘ーい…(笑)。
   っていうか誰?アスラン?人格変わりすぎ…。
   え、カガリ…?味覚オンチですよね…?
   おかしいオカシイ(死)。
   あーーっもうグチャグチャ!!すみませんこんなんで!!(自己嫌悪)
   実は修学旅行に行った時に妄想した産物(爆)。
    「この飴何味?」
    「さぁ?食べれば分かるやろ」
   まんま友人とのやりとりです(苦笑)。
   最初はこのネタをディアミリでやるつもりだったんですけどね、
   アスカガで甘いのを書きたくなったのでアスカガに変更しました。
   因みにタイトルは某漫画のタイトル風にしてみました(笑)。
                                
<2005,11,16>